デ・キリコ展を見に行く
5月の中旬、上野の東京都美術館に〈デ・キリコ展〉を見に行きました。感想と、うれしくていろいろと買ってしまったグッズの話です。
- 場所
- 東京都美術館(上野・東京)
- 会期
- 2024年4月27日[土]~8月29日[木]
昔、1996〜1998年ごろ、都内でジョルジョ・デ・キリコの展示があったとき、両親に連れられて幼い頃に見に行った記憶があります。そのときの展示について調べても詳細はわかりませんが、そのとき初めて「通りの神秘と憂愁」を目にして、絵の前で足が動かなくなるほど、取り込まれたような気持ちになったんです。
これをきっかけにジョルジョ・デ・キリコという画家と「形而上絵画」が好きになりました。
2014年に汐留ミュージアムで展示があったときに行けずに悔やみ、また大規模な展示があるタイミングを心待ちにしていました。そして、2024年の今回です。

木曜の午前中に訪問。
展示室内は一切の撮影が禁止なので、外側だけ。
展示室の空間デザインは、キリコの形而上絵画の世界に迷い込んだかのような雰囲気でした。ビビットな色の壁、イタリアの伝統的な建築物のアーケードの開口部、そして遠近感が強く感じられる配置が印象的でした。
展示見ながら個人的に気になったポイント。解説文や図録などから。
生い立ちで気になったポイント
- 1888生まれ。貴族の両親に愛されて育つ。語学、楽器など恵まれた教育。
- 1910年22歳の時にフィレンツェのサンタクローチェ広場で、突然目の前の風景が変わったように感じられ、自分の描くべき絵(形而上絵画)が見つかった。
- 1913年の25歳の時に初めての作品「赤い塔」が売れる。
- 1915年の27歳のときに第一次世界大戦の徴兵に応じる。
- 30代は、ティツィアーノ(ルネサンス時代のヴェネツィアの巨匠)の絵画に影響を受け、ルネサンスやバロックの伝統的な絵画に回帰。シュルレアリスムの画家たちに裏切り者扱いされる。
- さらに晩年は、新形而上絵画に再び取り組む。
- 生涯で21回引っ越したが最後はローマにて90歳で亡くなる
影響を受けたもので気になったポイント
キリコは、形而上絵画の印象が強いけど、若い頃や晩年はアルノルトベックリンやティツィアーノのような、繊細でリアルないわゆる宗教画っていうイメージの画家たちの影響を受けていたというところが意外だった。あと、哲学好き。
- 若い頃、哲学も学び、ニーチェを耽読。鬱状態に悩まされる。
- 若い頃はアルノルトベックリン(19世紀、スイス出身の象徴主義の画家)影響を受けた作品を描いてたらしい。
- アーケードのモチーフなどは、フェッラーラ(イタリア)の街並みに影響を受ける。
- ギリシャ神話のモチーフがたびたび登場。
- ニーチェやショーペンハウアーの哲学から学んだ、”生の無意味さ”を絵画に落とし込んだりしている(剣闘士)。
- 30代は、ティツィアーノ(ルネサンス時代のヴェネツィアの巨匠)の絵画に影響を受け形而上絵画を離れる。
キリコが晩年に描いた古典絵画調の作品も数多くあり、それらは非常に美しく写実的。なのだけど、キリコらしい「ヘン」な要素や形而上絵画の不穏な配置からくる不可解さもあり、不思議な面白さを感じました。
なんで自画像を描くんだろう?
ところで、キリコも多くの自画像を描いていて、なぜ画家は自画像を描くのだろうと不思議に思っていましたが、芸術AERAにはこう書かれていました。なるほど。
ルネサンス以降、多くの画家が自画像を描きました。自画像はモデルを雇う費用も時間の制約もなく、自在に技術の修練が可能です。しかし根底にあるのは自意識です。社会の中で「個人」としてどのように生き、死んでいくのかという関心が高まると、自画像を描く画家が増えていきました 出典:【芸術AERA】デ・キリコ大特集 - 朝日新聞出版
展示の出口付近にあった、撮影可能なフォトスポット。ちょっと飛び出ていて立体になってた。


買ったグッズ
キリコ展で買ったグッズ

図録
図録かっこいい。主に今回展示されていた絵と、その解説が載ってます。分厚くて重厚なハードカバー。
今回は、わたしが一番好きな作品「通りの神秘と憂愁」の展示がないのだけど、この図録と、後述の「芸術AERA キリコ大特集」に「通りの神秘と憂愁」が載ってました。

解説文も充実していて非常によい。

芸術AERA デ・キリコ大特集
「大特集」とある通り、90%以上はキリコ特集でした。「通りの神秘と憂愁」が載ってるのが嬉しくて、こちらも購入。

キリコを敬愛する小説家や美術家のインタビューや、さらに、展示の楽しみ方についても語られており、図録とは違う切り口でおもしろい。
「通りの神秘と憂愁」は検索してぜひ見てみてください。
芸術AERAを読むと、人物像についてこんなことも書いてある。彼は口が悪いことで有名で、他の画家(セザンヌ、ゴーガン、マティス)を批判することもあったようです。若くして革新的な画家として注目され、少年時代から長く絵画の教育を受け研究してきたという自負があるのだなと。
芸術AERAは美術館以外でも、普通の書籍として売っています。
クリアファイル
見開きでポケットがついてるA5サイズのクリアファイル。最近、美術展に行くと、定番のように置いてあるね。買っちゃうけども。

絵柄が内側と外側で異なるのも楽しい。これの他に、もう一種類ありました。
ポストカードとアートフレームマット
「大きな塔」と「横向きの彫像のある形而上的室内」のポストカードを買いました。ポストカードもいつも買うもの。展示で一番好きだった作品のカードを2,3枚選んでます。

「大きな塔」を目にすると、秩序と狂気…みたいな気持ちになる。向こうに朝焼けみたいなのが見える。時間帯はわからないけど、1人でいるんだという気持ちになる。もしかしたら、時間もないのかもしれない。世界の外側を覗いているのかもしれない。
窓に少し映る朝焼けの地平線のような明るみが、安心するような、逆に息が詰まるような気分になってくる。朝焼けと言ったけど、厚い雨雲と遠雷のようにも見える。もしかしたら、宇宙空間かもしれない?この室内も落ち着かない。でも、窓の外に出たらどうなるんだろう。ああ怖い。

ポストカードを額装しやすくするために、いい感じに画角を切り抜いてくれるアートフレームマット。かなりいい品質なのに400円とかなんですよね。買っちゃう。
種類が多く、迷いそうだけど、ぴったりのアートフレームマットを簡単に選べるように工夫されている。
ポストカードの端っこに書いてあるアルファベットが、アートフレームマットのアルファベットと一致するものを選びます。

すると、ちょうどいい縦横比でピッタリ切り取られるような仕組み。額を買わねばなあ。
マグ
背が低くて口の広いカップやグラスが好みなんですが、まさにこのマグがそんな形していたので、買っちゃいました。

ぽってりしているわけではなく、割と薄めでシュッとしている。

でも、持ち手はゴツめで持ちやすくていい感じ。背が低くて口の広いマグは最高。

パンフレットと出品リスト

朝日新聞の号外


これ本当に配られたりしたんだろうか?
10年前2014年の図録と比較
※ 今回の購入品ではないです。
2014年に汐留ミュージアムで展示があったときの図録。
2014年のキリコの展示はなぜか行けず(忘れてるが当時は忙しかったのか)、図録だけ購入。10年後の今回はまともにちゃんと鑑賞できてよかった…


10年前の図録(左)と今回の図録(右)


おまけ:根津を散歩したのも楽しかった
〈蕎麦 松風 〉で蕎麦ランチ。十割蕎麦おいしい。

普段かなり並ぶらしいが、数人しかいなかったのでラッキー!〈根津のたいやき〉

薄皮あんこぎっしり。あんこは水分多めでしっとり系。好み。
〈FIVE COFFEE〉でエスプレッソトニック

気になってたパン屋さん〈Du Pain et Des Gâteaux Les Initiés 〉。
ここのバゲットがいちばんおいしいと言ってる人がいたので気になった。

帰ってさっそく、バゲットを食べた。
香りはそんなに強くない気がするけど、中の生地には水分量が結構あり、ねっちりと強い弾力を感じる。対照的に、外がバリバリジャリジャリしていて軽く硬い。めちゃくちゃおいしい。これでフレンチトーストとガーリックトーストを作ってみたらすごいよかった。
あとは銀座MUJIの〈ATELIER MUJI GINZA〉で、「Mid-Century MUJI 展」見た。

小さな展示スペースだけど、毎回好きな企画をやっているので好きな場所。

イームズの椅子は展示のみではなく、販売もしていました。